例会報告
 第33回「ノホホンの会」報告

2014年4月11日(金)午後3時~午後5時(会場:三鷹SOHOパイロットオフィス会議室、参加者:狸吉、山勘、高幡童子、恵比寿っさん、ジョンレノ・ホツマ、本屋学問)

今回は、先に花見優先のスケジュールとしたため、致智望さんがどうしても出席がかなわず残念でした。ただ、桜が予想より早く散ってしまい、結果的には皆さんも拍子抜けでした。例会中もアフターファイブの飲み会でも話題の中心はSTAP細胞で、この騒動で“STAP”も“小保方”も初めて耳にしましたが、何とか希望的方向で収まってほしいものです。残念ながら参加できなかった致智望さんのネットエッセイ「デジタル家電」は、次回に発表をお願いいたします。

なお、8月は例年夏休みとしているので、7月例会後にささやかな暑気払い(少し早いですか)を計画しています。おそらくその流れでカラオケに繰り出すかもしれません。シューベルトもよろしいですが、演歌もまた一興です。

~好いた女房に三下り半を~ 投げて長ドス 長の旅 ♪ ~



(今月の書感)

「土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫 何匹いるか」(ジョンレノ・ホツマ)/「日本のロケット 真実の軌跡」(恵比寿っさん)/「知の武装 救国のインテリジェンス」(本屋学問)/「リニア新幹線 巨大プロジェクトの『真実』」(高幡童子)/「老いるについて―下町精神科医 晩年の記」(狸吉)

(今月のネットエッセイ)

「豊受神と天照神」(ジョンレノ・ホツマ)/「見えぬものでもあるんだよ」(山勘)/「ルールとマナー」(本屋学問)/「STAP論文」)

(事務局)


 書 感
 

日本のロケット 真実の軌跡/宮川輝子(ルネッサンス・アイ 本体1500円2013年8月20日発行)

著者プロフィール

昭和8年東京生まれ、同26年東京都立武蔵高等学校卒業。同30年日本女子大学卒業、同年宮川行雄と結婚。

昭和51年~「静穏権」を掲げ、環境保護活動を行う。同58年環境公害研究所を設立。

主な著書

「静穏権」(日本評論社)、「輝け!二十一世紀」(旺文社・環境公害研究所)、「静かさは文化のバロメーター」(文芸社)、「松竹梅」(松宮竹)文芸社。


はじめに 本書執筆の動機

目次

第1章 ロケットの歴史

第2章 大戦中の日本の技術水準

第3章 我が国の宇宙開発の黎明期

第4章 我が国初の近代ロケットNIPPONの誕生

第5章 国産技術の飛翔

第6章 我が国の人工衛星

第7章 物語は如何にして作りかえられたか

あとがき 幸せな科学者


書名を新聞で知ったとき、これは絶対に読まなければならない本だと直感したが、内容・ボリュームと大したことないのに価格が高いので図書館から借りた。

 かねてより疑問に思っていた「ペンシルロケット(個体燃料)がいつから衛星を打ち上げられる本格ロケット(液体燃料)に成長したのか」ということに答えてくれると期待したからである。

 従来、糸川英夫が「ペンシル」で始めたのが日本ロケットの歴史の一頁と語られてきたが、実はそうではないと言うのが本書の主張であり、それを主導した技術者(宮川雄)の未亡人が著者であるので、自己主張が強い内容であるが、概ね本書が正しい歴史を語っていると感じた。

 何故なら「糸川源流説」を吹聴している輩にはかねてより胡散臭さを感じて来たからである。ある意味で溜飲が下りた次第。


宮川は1944年東京帝大工学部機械工学科を卒業し「東京帝大航空研究所」に勤務。この年から米軍B29の本土爆撃が始まり、10,000m上空を飛ぶB29に対処するため、射程16,000m以上のロケット砲が急ぎ開発された(これに宮川が参画していたか否かは書かれていない)。これが奏功し、1発のロケット砲で2機のB29を撃墜している(1945.8.1)。

 特攻機「桜花」や「梅花」は、世界初のロケット推力利用の航空機である。ジェット戦闘(特攻)機「橘花」はジェットエンジンだが(IHI製)、これらはいずれもドイツからもたらされた資料に基づいての国産である。

また、このころは陸海軍が合同して最大速度900km、高度1,000mに3分30分以内で到達する戦闘機としてロケットエンジンが必要となり、ドイツからロケット技術を導入した(ドイツ側も試作段階で、資料等の運搬手段に窮したが一部分だが資料は44年7月19日に到着した。MHIがエンジン・機体ともに担当して「秋水」が開発された。ロケットエンジンは「特ロ2号」(45年7月7日の試験飛行ではパイロットが死亡)。更に「奮竜」というロケット推進式無線追尾型(液体燃料式)ミサイルも実用化のめども立っていた。

 敗戦により、これらの技術や航空産業は葬られたので、時代を巻き戻したようなペンシルロケットを日本のロケットの嚆矢とするような滑稽極まりない歴史が綴られることが起こった。

 戦後、NAL(航空技術研究所)の母体となったのが、宮川の所属する研究所(その時の名称は航空研究所)で上述のように、ここで液体燃料ロケットの研究開発がおこなわれてきた。56年にNALではV‐2の究明から始めたが宮川がその主務についた。

 この頃に糸川が登場する。後に「日本のロケットの父」と呼ばれる糸川英夫は1935年に東京帝大航空学科を卒業し中島飛行機に入社し「隼」等の設計に関わったとされ、その後は第二工学部の助教授に就任。戦後は生産技術研究所となった。53年に「ロケットをやろう」と協力社を求めて富士精密だけが協力することになった。糸川は54年に「75年までに20分で太平洋を横断する旅客機の実現を目標にする」というスタンドプレーを行っている。

 55年ころの日本は液体ロケットの研究をしていたが、衛星計画はなかった。伊勢湾台風の甚大な被害から、人工衛星を打ち上げて台風を監視する必要からその計画が具体化した(62年)。LS‐A(1段目個体、2段目液体)が64年に初の投入で成功した(高度110km)。この頃(64年)の生研はラムダ4S(4段式個体)で失敗の連続であった。つまり、日本ではロケット研究が2本立てで行われていた。

 69年にNASDA(宇宙開発事業団、現JAXA)が発足する時に生研(+日産)の固体燃料型は開発中止に追い込まれそうになったが、科学研究だけの目的という条件付きで生き延びた。φ1.4m以上はNASDAと決まった。03年には統合。その後は我々の知るJAXAは今や世界のトップクラスの仲間入りをしている。12年までに21機中20機が打ち上げ成功。

(恵比寿っさん 2014年4月7日)


 

土屋耕一回文集 軽い機敏な仔猫 何匹いるか/土屋耕一(角川文庫 昭和61年発行)


先月の読売新聞の編集手帳に「回文」のことが取り上げられており、本書の存在を知りました。

まえがきに、回文というのは、上から読んでも下から読んでも同じ文になる文のことです。昔から「タケヤブヤケタ」が有名です。回文の作り方は、先人の残した伝承ですが、仮名づかい、とくに濁点は現代表記に従って変えているとあります。

さらに、まえがきには「長き夜の 遠の眠りの 皆 目覚め 波乗り船の 音の良きかな」(ナカキヨノ トヲノネフリノ ミナメサメ ナミノリフネノ ヲトノヨキカナ:ホツマツタエ本文より)という歌が、お正月の宝船に添える歌として古代から受け継がれてきた回文歌の名作です。とあり、同じ歌が「まわりうた」(廻り歌)として、ホツマツタヱにもあることに感心しました。


しかし、ホツマツタヱにある、上から読んでも下から読んでも同じという廻り歌(回文)の意図は、その歌を聞いたものは、返事のしようがない。つまり返歌できないことを意味していました。この歌を聞いたら最後、そこから逃げられずに言うことを聞かざるを得ないという意味合いがあったようです。

当時は、相手に対し、歌を詠んだら、その歌を受け取った者は同じ韻を踏んだ歌で返事をする世界であったようですが、返事が返せないようになっていたということになります。


ホツマツタヱの説明では、「御幸」の船に乗っていた時、風が激しく波を鎮めようと風の神に廻り歌を詠んだ歌で、「かなざき」(住吉の神)が、波を鎮めるという願いを、風の神を相手に詠んだ歌になります。

この歌を詠んだ結果、風は止み海は静かになって船は心地良く進み、阿波(徳島)に着きました。これが、後世になって、縁起が良いので宝船となって伝えられて今に伝わっていたのでしょう。


もう一つ、ホツマツタヱにしか受け継がれていないと思われるものに、ワカヒメ(天照神のお姉さん)が、勅使としてやって来たアチヒコに一目ぼれして、歌冊(短冊・うたみ)に詠んだ恋文があります。


紀州こそ 妻を身際に 琴の音の 床に吾(我)君を 待つぞ恋しき

(キシイコソ ツマヲミキワニ コトノネノ トコニワキミヲ マツソコイシキ)


紀州にいらしてください。私は貴方の妻となって、いつも、御そばで琴を奏でて差し上げましょう。布団を敷いて貴方が来られるのを恋しい想いでお待ちしています。この歌で、結ばれ、オモイカネと名が変わりました。

本書の前書きには、回文はその後、短歌になり、連歌になり、俳句になり、或いは口頭遊戯になりなどして、さまざまな展開をみせたのですが、近ごろでは、まったく聞かなくなってしまいました。

現在では、ごく一部の方を除けば歌の世界に居られる方は稀になっていますので、このような世界は消滅してしまったと思われます。


本文にある、回文の幾つかです。


求む友(モトムトモ)

占い習う(ウラナイナラウ)

皆はお花見(ミナハオハナミ)

関係ない喧嘩(カンケイナイケンカ)

ママが私にしたわがまま(ママガワタシニシタワガママ)

スマートなトーマス(すまーとなとーます)

軽い機敏な仔猫何匹いるか(カルイキビンナコネコナンビキイルカ)

酒を互いに新潟おけさ(サケヲタガイニニイガタオケサ)

品川に今棲む住まい庭がなし(シナガワニイマスムスマイニワガナシ)

いい女 モテてモテても難を言い(イイオンナモテテモテテモナンヲイイ)

力士手で塩なめなおし 出て仕切り(リキシテデシオナメナオシデテシキリ)


以下は別の土屋耕一シリーズより


新年、年始(シンネンネンシ)

桜ひらくさ(サクラヒラクサ)

桜切る、気楽さ(サクラキルキラクサ)

酒呑みな、花見の今朝(サケノミナハナミノケサ)

花見にうとく、とうに、皆葉(ハナミニウトクトウニミナハ)

ママが我儘(ママガワガママ)

柚子湯(ユズユ)


上から読んでも下から読んでも、同じであることには新旧どちらも違いがないのですが、現代は言葉の遊びで愉しんでいるのが良く分かります。古代ホツマツタヱの回文から進化して別物となって生き続けていることに感慨を覚えました。

艶物も多く見受けられ、高度なダジャレへと進化しているように見受けました。

(ジョンレノ・ホツマ 2014年4月7日)

知の武装 救国のインテリジェンス/手嶋龍一・佐藤優(新潮社 2013年12月 本体760円)


 ニュースを鵜呑みにしていては、深層はつかめない。激流の世界で勝つには知性(インテリジェンス)が必要だ…。こんな書き出しで始まる本書は、NHKの報道記者を経て現在は大学で教鞭を取る外交ジャーナリストと、ロシア問題の専門家で“日本のラスプーチン”の異名を取る元外務省主任分析官の対談形式で、世界の最新情勢の解読法から諜報の基礎知識まで、いわゆる“情報の読みかた”について解説した入門書である。

 目次を挙げただけでも、「アジア安保としての東京オリンピック」「飯島訪朝の怪」「サイバー時代のグレート・ゲーム」「東アジアに嵐呼ぶ尖閣問題」「海洋覇権のなかのTPP」「インテリジェンスの生態史観」「超大国のインテリジェンス文化」「『日の丸インテリジェンス』はまた昇る」と、日本が直面する難しい国際情勢の現実が浮かび上がる。

東京オリンピック実現は尖閣や竹島問題を当面棚上げしたが、招致成功の裏にはシリア問題などで安倍政権がロシアに理解を見せた見返りにプーチンがロシア票をまとめたことが大きいとか、金正日が「北朝鮮は核開発能力がない」とプーチンの特使にいったのを真に受けてアメリカに伝えたら、それが大嘘だったので頭に来たプーチンは北朝鮮が大嫌いだとか、ロシア極東の農村地帯は人口が減り、今や中国の資本と労働力なしには大規模農業は不可能で、ロシアは日本との関係を強化して中国の影響を抑えたい。そこで北方領土問題を解決したいが、返還後は安保条約からアメリカ軍が駐留するので非軍事化が前提など、新聞やテレビでは紹介されない興味深い“深層”が語られている。

石原元都知事や猪瀬前知事が明言した尖閣列島の灯台建設がもし現実になると、中国が東京オリンピックをボイコットするのは確実で、深刻な国際政治問題に発展するのは必至だ。やっと戦後の諸問題が解決の方向に進み、沈静化するかに見えた中国、韓国との間で領土や慰安婦など歴史認識問題が再燃したのは、尖閣の国有化と安倍首相の靖国神社訪問がきっかけだったと本書はいう。

“情報に同盟なし”というように、緊密な同盟国も国際交渉では国益を賭けて渡り合う。インテリジェンスとは、国の指導者が国家の命運を賭けた決断の拠りどころとする情報である。長く対外情報収集の重要性を意識してこなかった日本は外交の基礎体力が衰え、アメリカや中国、ロシアとタフな交渉をする能力がない。著者らはとくに、靖国問題が日米関係にどれだけ暗い影を落としたか、安倍首相の想像力と感受性に欠けた政治理念に違和感を持つといっている。また、国際世論がイランの核開発に敏感な時期に鳩山元首相が日本からわざわざ出かけ、「IAEAは二重基準だ」と語ったのはイランの核開発を承認したことと同じで、あまりに国際認識と乖離しているとも。

日米安全保障条約は、台湾と朝鮮半島の有事という2つの究極事態に備えている。今や北朝鮮にはかかわりたくない中国も、台湾が独立を目指せば武力行使するだろうし、軍事力の弱体化が進むアメリカは台湾を支援できるのか、その場合の集団的自衛権問題とも絡んで日本の選択は容易ではない。世界の覇権を目指す中国の攻勢を牽制するためには、日本は東アジア始め国際世論を味方につけておかなければならない。そのためにも日本は政治体制が同じ韓国との関係改善を優先すべきで、場合によっては大胆な譲歩も必要ではないかと本書は提案する。

そして、中国が尖閣の領有化はおろか、沖縄を日本から分断することまで考えている現状では、沖縄の心情を汲めば普天間基地の辺野古移転は諦めるべきだ。インテリジェンスは国家のために存在する。日本の国家統合を根底から揺るがすような事態を避けるためにも、国家は現実的な知恵を絞る必要がある。

本書はこう結んでいるが、常に流動的で時々刻々変化する国際情勢に有効な対応策が果たしてあるのか。インテリジェンスには教育と訓練で習得できる技術的な部分と、それでも対処できない部分があり、それが芸術に通じる天賦のセンスだと著者はいうが、ある意味で『甲陽軍艦』の“人は城、人は石垣…”に通じる人的資質の重要さかもしれない。

(本屋学問 2014年4月8日)

リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」/橋山禮次郎(集英社新書 初版2014年3月19日)


著者 1940年生まれ。千葉商科大学院客員。教授。アラバマ大学名誉教授。専門は政策評価、公共計画、経済政策。日本開発銀行調査部長。日本経済研究所専務理事。大平内閣の「田園都市国家構想」立案に参加。運輸政策審議会。産業技術審議会。経済審議会等委員。著書「必要か、リニア新幹線」岩波書店 など。


リニア計画とは 

伝導磁気浮上方式 時速500km、東京大阪間1時間強、86%の区間が深層地下トンネル(中央ルート)、建設営業主体 JR東海単独、事業費9兆円、2014年着工、2027年名古屋、2045年大阪開業、乗客1000人、運賃 現行比1000円高


リニア計画はなぜ生まれたのか

JR東海の利益の60%は現行新幹線から。旅客数は定員の60%で頭打ち。老朽化した現新幹線を運行しながらの改良は難しい。会社を存続させるには第二新幹線の建設しかない。

 

過去の「失敗プロジェクト」に学ぶ

東京湾横断道路 1日あたり1億円の赤字、当初目的未達、道路公団が尻拭い

超音速コンコルド マッハ2 英仏 開発費5000億円 生涯 16機 騒音のため利用受け入れ2空港のみ、燃費6倍、料金3倍、パリで大事故 3年で廃止

英仏海峡トンネル ユーロスター50km 民間事業 建設コストの大誤算 資金計画の破綻により倒産


事業が成功するには、目的と手段の正確な見積もりと判断が必要である。


立案=JR東海 オラが会社のため

認可決済 運輸大臣

決済基準=県民、国民の支持 内閣支持率 

国民の関心=先のことなので関心が低い 当面間に合っている

この本の目的=本が売れる事


古代エジプトのピラミット、中世日本の城が多数建設されたのは、庶民に仕事と賃金を与え、反乱を抑えるためだったともいわれる。リニアは事業か政治か?

(高幡童子 2014年4月9日)

 
 

老いるについて―下町精神科医 晩年の記  (2010年岩波書店 \1,200)


 題名どおり、東京・上野で地域医療を続けた著者(精神科医)のエッセイ集。真宗大谷派の広報誌「サンガ」に1992年(著者65歳)から2009年(82歳)まで、本書と同じタイトルの下に連載したものだけに、一編が1~2ページから数ページの短文で、どこからでも読み始めることができる。


 内容は「バブル崩壊と阪神・淡路大震災」、「ぼけと痴呆の間」など幾つかに章立てされているが、どれもい老いに伴う問題を取り上げている。あるときは行政や世間に対し怒り、あるときは諦観の境地から、自らを含め衰え行く人々の姿を記述している。


 痴呆性(著者はあえてこの言葉を使う)老人の特徴を、「家族や知人が認識できない」、「家を出て徘徊する」と次々に挙げ「不潔行為」にまで及ぶ。痴呆が進むと次第に言葉を失い、拒食が始まり遂には水も拒む。しかし、なぜか最後に歌だけが残る。死に行く過程を見つめる著者は、「人は生まれ、育ち、働き、老い、そして時にはぼけ、そして死ぬ。それはしごくあたりまえのことなのである」と言う。


 また、自分自身歳をとって「ぼけた」と感じ、「整理ができない、好奇心が衰えた、本を読まない、財布を忘れる、電車を乗り過ごす」と列挙し、そして「とげとげしかった自分の母が晩年ぼけてから仏のようになった。これは成長(成熟)、神様のお恵みだ」と達観する。これはまさに真宗で言うところの「妙好人」の世界ではないか!


 石牟礼道子さん(水俣病に関する著作で有名)から聞いた、「天草のもだえ神様」を紹介している。この神様は普段は何もしないが、人が死ぬ時傍に来て、一緒に声を出して、もだえて死を看取るとのこと。


 本書を読み進めると、著者が記述する老い行く過程が、すべてこれを読んでいる自分に当てはまり、一種の救いを感じた。この著者こそ現代の「もだえ神様」ではないか! 老い行く一人としてお礼を申し述べる。

(狸吉 2014年4月11日)

 エッセイ 

豊受神と天照神


天照神は、今までの歴史書・古事記、日本書紀を始め全て女性神として記されており、当然のように思っているため、ホツマツタヱには男性神であると言ったところで、納得できる話ではなく、その時点で、拒否されるのが現状でした。


予てより、何とか接点を見つけようと思っていました。先月、天照神誕生に至る経緯と背景をホツマツタヱの記述の中から図表に展開してみました。納得できなくとも、目で見れば、ホツマツタヱが記述している内容について、多少なりとも分かっていただけたのではないかと思ったからです。


この図表を作ったときは、天照神の誕生に至る経緯を詳細に目で追えるようにするのが目的でした。しかし、この図表が出来上がってみると、今まであまり意識することの無かった豊受神が如何に偉大であったかが見えてきたことに驚きました。

そこで、新たに、豊受神と天照神の対比ができるように追記・修正をいたしました。この、お二人の神様は伊勢神宮の外宮と内宮にそれぞれ祀られておられます。


ホツマツタヱの記述によれば、天神の始まりは初代のクニトコタチからで6代オモタル・カシコネまで続きましたが世継ぎ皇子に恵まれず、代が途絶える危機を迎えます。

その状況を察した、5代目タカミムスビが全国を駆け巡り、代々の天神の子孫の血筋の中から、後のイサナギを見つけ、自分の娘のイサナミと結ばせて皇位継承に尽力をつくします。


この5代目タカミムスビはタマギネとも呼ばれ、さらにはトヨケ神・トヨウケ神とも呼ばれ、後に漢字化されたとき豊受神と表されるようになります。

今で言う天皇としての扱いを受け「オオナメコト」(大嘗祭)を司り、東の君(キミ・今で言う天皇)としての天成道を受け継ぎました。


これらの記述から、タカミムスビが居られた日高見地方が当時の日本の中心地であったことが理解できます。仙台地方が日本の中心地であった時期が間違いなく存在していたことになります。

天照神が生まれる前、ましてや大和朝廷が生まれる前のこと、今まで、教科書で理解している歴史感の中にはなかったことです。

現在の北上川は、当時はヒタカミ川と呼ばれていたものがキタカミと聞き違えて漢字化されたものと考えられています。


驚くべきことに、東の君・5代目タカミムスビ(豊受神)に対応して、西の母君・西王母と雄大なスケールの世界が当時存在していたことが図表より確認できることです。


ウケステメ(後の西王母)は2度も来日し、イサナギ(男神)の妹に当たるシラヤマ姫と義理の姉妹に契りを結んでいます。さらに、この5代目タカミムスビに仕えていた記述もあり、タカミムスビ(豊受神)はヤマノミチノクをこのウケステメ(西王母)に授けています。


このように、5代目タカミムスビ(豊受神)は、イサナミ(女神)の父親であると同時に、後の天照神の祖父にあたり、天照神の教育もされています。

現在では天照神のお食事係とされていますが、ホツマツタヱの記述からは、天照神を生み育てあげた如何に偉大な方であったかを知ることが出来ます。

(ジョンレノ・ホツマ 2014年4月2日)

ルールとマナー


先日、東京の有明コロシアムで日本とチェコが対戦したテニスのデビスカップ(デ杯)の試合をテレビでやっていたが、見ていて少し気になったことがあった。観客が日本人選手のポイントに拍手を送るのはよくわかるが、チェコの選手が打った球がネットにかかったりアウトになっても会場から大きな拍手が上がるのである。逆に、チェコの選手がエースを打っても拍手はほとんど起こらない。

テニスで、何でもない球をネットしたりアウトする凡ミスを「アンフォースドエラー」という。私がテニスを始めた半世紀前、相手のアンフォースドエラーでポイントを取っても観客は拍手などしなかった。テニス観戦の心得として、相手選手のミスを喜ぶようなことはマナーに反し、無作法でスポーツマン精神にそぐわないとされていたからである。

テニスに限らず選手のファインプレーを拍手で称えるのは観客のマナーだが、いつの頃からか自国の選手を応援するあまり、相手のエラーに対しても拍手をする無神経なファンが目立ち始めた。この試合を見ながら、しまいには拍手が耳障りになったものである。

テニスのルールは他のスポーツ以上にわかりやすく、しかも合理的である。ワンバウンドでも返球すれば有効で、球がラインに少しでも触れていればセーフ(イン、グッドという)、サーブは2回まででき、途中でサーブの順番やレシーブのサイドを間違っても、その時点からやり直せばいい。

大きな大会では、選手は審判の判定に不服ならその場で“チャレンジ”を宣言すれば、コート全体をカバーするビデオカメラシステムで球の落下地点をCGで再現し、確認できる。プロ野球の試合で、誰が見てもファウルの打球が審判の一言でホームランになって揉めるようなことはまずない。もっとも、最新のニュースではアメリカのメジャーリーグもビデオ判定を採用することになったらしい。

 テニスで使う言葉にも味がある。ダブルスでパートナーの打った球がわずかにラインの外に出たら“ジャスト”、正しくは“ジャストアウト”、「もう少しだったのに惜しい」とパートナーを慰める。また、相手のミスに対しても“バッドラック”、「残念ですね」、負けた相手を“グッドルーザー”、「美しき敗者」と称えるのがテニス精神の原点である。

 公式の試合では何人もの審判が付くが、私たちがやっているような素人仲間の試合では“セルフジャッジ”、つまり、対戦者どうしが互いに判定をするのが普通である。そして、真のスポーツマン精神は、まさにこのようなときに発揮される。

たとえば、相手の球がライン際の微妙な地点に落ちたとする。ひょっとしたらラインにかかっているかもしれない。でもそんなとき、大抵は自分に有利なように“アウト”とコールしがちだが、紳士淑女のスポーツであるテニスの教えは「疑わしきは相手の有利に」だ。アウトかインか判断できないときは常に相手にポイントを与える、というのがセルフジャッジの基本精神なのである。

 このストイックな教えは、考えてみれば日本人の精神構造ともマッチしているように思える。デ杯を観戦していた人たちも大いにテニスを楽しんでもらいたいが、どこかのサッカーの無観客試合のような “贔屓の引き倒し”にならないよう、たまにはテニスのマナーブックも開いてみてほしいものである。

(本屋学問 2014年4月7日)